フリフリ編

第一話

「本っっっ当にすまん!」
俺は深々と魅音に頭を下げた。

「もういいよ、圭ちゃん・・・」
「甘いですよ、お姉。お仕置きはきっちりしておかないと」
魅音が困惑した表情で押し止めるが、横から詩音が口を挟む。
「女心を傷つけた代償は高いんですよ〜」

お前が言うな。


日曜日のエンジェルモート。
ここで俺は魅音と待ち合わせをしていた。

といっても、「デート」なんて色気のあるものではなく、 部活用のゲーム選びに付き合って適当に遊んで帰るという他愛のないものだ。

午前中は魅音のバイトがあるから、昼食後の午後一時にここで落ち合う予定だった。
だが、午後なら寝過ごす心配もないと油断したのが運のツキ、 気がつけば約束の時間が間近に迫っていた。
焦って近道をしようとしたところ、交通止めにあうわ自転車のタイヤがパンクするわで、 エンジェルモートまでたどり着いた時には、軽く二時を越してしまっていた・・・。


・・・で。

「お姉、そろそろ新しい服が欲しいって言ったじゃないですか、 この際圭ちゃんに買ってもらいましょう」
「え!?今月の小遣いはもう使う予定が・・・」
「圭ちゃん〜? さっきのお姉のこと教えてあげましょうか〜?」
詩音は俺の言葉を遮ると、意味ありげな笑みを浮かべて囁いた。
「ちょ、詩音!?」
魅音が動揺する。

詩音は巧みに魅音の物真似を披露した。
「時計と外を交互に見ては溜息ついて、うつむいて。
『圭ちゃん、どうしたのかなあ・・・』なんて涙目で・・・」
「しーおーんー!!」
こう言われては素直反省するしかない。
「わかったよ・・・」
「はい、決まりですね、圭ちゃんのセンスに期待してますよー」

しかし、魅音の服なんて、どう選べばいいんだ?


翌日の部活は魅音がなぜか絶好調で、懸命に食い下がる他メンバーをものともせず、 終始トップを独走し続けた。
特に俺は徹底的に叩きのめされ、魅音に命じられるままに恥ずかしい格好を余儀なくされた。

「くっくっく、圭ちゃん今日も素敵だよ〜!」
「はう〜、ちょっとだけお持ち帰りしてもいいかな?かな?」

帰り道で魅音とレナに弄ばれているうちに、ふつふつと復讐心が湧いてきた。
こうなったら、魅音にも恥ずかしい服を着せてやろう。

「じゃあねえ〜。道の真ん中で脱いじゃだめだよー。あははははは」

待ってろよ、魅音、次に恥をかくのはお前だ!
勝ち誇った魅音の笑い声を聞きつつ、俺は復讐を誓うのだった。