フリフリ編

第二話

俺は親父の協力を得て目的の品を入手すると、放課後の教室で魅音に手渡した。

「ほら、魅音。例のお詫びだ」
「え!?圭ちゃん、もう買ってきたの?」
魅音はなぜか拍子抜けした様子だった。

レナと沙都子、梨花ちゃんも寄って来る。
「何ですの?」
「魅ぃ、早く開けるのですよ」
「はう、何かな?かな?」

好奇心を押さえ切れない様子の仲間たちに促され、魅音は包みを解いた。
「え・・・!?」
「はぁう〜!!かぁいいよ〜!!」
中から現れたのは・・・。


鮮やかな真紅の生地には一面のピンクの薔薇!
桜色のフリルがこれでもかというほどにくっついた、乙女の憧れ、ピ○クハウスのパーティードレス!

・・・明らかに罰ゲームくさい衣装では即座に拒否されて俺の計略は水泡に帰すだろう、 しかし、これならメイド服などとは違って、一応「普通の服」だという言い訳が立つ!
完璧だ!

「圭ちゃ〜ん、これ、本当におじさんが着るの?」
魅音は一瞬赤面した後、不満げに口を尖らせた。
「当たり前だろう?『俺』が『魅音のために』選んだんだからな」
俺は何でもないことのように言った。
「そ、そりゃ有難いけど・・・おじさんにはちょっと・・・似合わないんじゃないのかな・・・」
「何言ってんだ、これは『普通の女の子』が着る服なんだ、別に魅音が着たっておかしいことはないぞ!」
「ふぇ!?・・・女の子・・・」
魅音がみるみる赤くなる。
「じゃあ、貰っておこうかな・・・」

・・・何か微妙な違和感を覚えたが、俺は計画を実行すべく次の言葉を口にする。

「さっそく着て見せてくれないか?」
「ど、どうして!?」
「魅音のことだ、このまま帰ればタンスの肥やしにして二度と着ないんじゃないか?」
「う・・・」
「せっかく俺が貴重な小遣いを割いて買ったんだ、一度ぐらいは着てくれないとがっかりするぜ」
「・・・」
言葉に詰まった魅音に俺はダメ押しをする。

「とにかく!俺はこの服を着た魅音が見たいんだ!!!」


カナカナカナ。
静まり返った教室にひぐらしの鳴き声が響く。

魅音は頭から湯気を立てており、沙都子までもが顔を赤くして口を半開きにしたまま硬直している。

・・・あれ?
・・・俺何か変なこと言った・・・?
・・・えーっと。
・・・俺はこの前の罰ゲームの仕返しに、魅音に恥ずかしい思いをさせたかっただけで。
・・・でも、魅音は顔をゆでだこのようにして、この上なく恥ずかしがっているような・・・。
・・・じゃ、何も間違ってはいないんじゃ・・・?
・・・でも、この空気はまるで・・・。


ボン!!!
派手な音がした。

「はーうー!!!レナも見たいんだよ、だよ!!!」

完全に「かぁいいモード」と化したレナは魅音の襟首と服をがしいっ!!と引っつかむと、 猛スピードで教室から消えていった。

カナカナカナ。
硬直したままの俺と沙都子。

「みぃ♪実に楽しみなのですよ」
ただ一人平常心の梨花ちゃんだけが、満面の笑みを浮かべていた・・・。