フリフリ編

第三話

しばらくしてレナが戻ってきた。
「お待たせー!魅ぃちゃん連れて来たよー!」

しかし、待てど暮らせど、開けたままの教室の入り口から入って来る者はいなかった。

「魅音ー?いるのかー?」
「帰ってくるのですよ、魅ぃ」
「魅ぃちゃん、大丈夫だよ。今の魅ぃちゃんは・・・はうー!」
扉の向こうで、何かが動く気配がしたが、中に入ろうとはしない。

「仕方ありませんわねー」
沙都子は、後ろを向いて何やらごそごそやってたかと思うと、入り口の方に向き直って呼びかけた。
「魅音さんー!後一分以内に入って来ないと、トラップが発動しますわよー!」
「さ、沙都子!?ちょ、待ってよ、私・・・まだ・・・」

あたふたと頭やスカートの端を覗かせながら、魅音が行ったり来たりしている。
入ろうとしては引っ込んでを繰り返してるうちに・・・。


ドーン!!!

轟音と共に、教室の扉がこちらに吹っ飛んで来た!!
レナの拳が扉を真っ二つに分断する。
その裂け目から、フリフリの物体が俺めがけて・・・。


「圭ちゃあああん!!!起きてよおおおおお!!!」

ゆさゆさと誰かが俺を揺さぶっている。
やめてくれ・・・気持ち悪・・・。

「揺すっちゃ駄目なのです、魅ぃ」
「ほら、圭一さん、起きましたわよ!?」
「魅ぃちゃん、圭一くん大丈夫だから、落ち着いてよ、ね?」

目の前に、見知らぬ少女がいた。
垂らした長い髪には花飾りのついた大きなピンクのリボン。
フリル満載の赤いドレスは教室の中では明らかに場違いだったが、 涙を浮かべた表情の愛らしさが衣装とマッチして・・・。

「ふぇぇ・・・。圭ちゃん・・・」
そうか、これは魅・・・。

ザザザザザ!!!
俺は突然いたたまれない恥ずかしさに襲われて、横滑りに逃げた。

「何してるんですの、圭一さん?」
「はう、圭一くん、カニさんなんだよ、だよ!?」
「いい動きなのです」

「圭ちゃん、本当に大丈夫・・・?」
魅音が俺を追いかけて顔を覗き込んでくる。
やめてくれ、心臓が・・・。
俺は真っ赤になった顔を見られないように下を向いた。
「だ、大丈夫だから、心配すんな」

その時、騒ぎを聞きつけだ知恵先生が教室に飛び込んできた。
「何ですか!?さっきの音は!?」


結局、レナと沙都子は知恵先生に教室の後片付けを言い渡され、 俺と魅音は二人で帰ることになった。

「まったく、やってられませんわー」
「沙都子ちゃん、がんばろ?」
「二人とも、ファイト、おーなのですよ。沙都子、お買い物はボクが行ってあげますです」
「ごめんね〜、魅ぃちゃん、圭一くん、先に帰っててくれるかな?かな?」
「おう、がんばれよ」
「じゃ、おじさんはこれでー」
そそくさと教室から出て行こうとする魅音。

「魅ぃちゃん」
レナが魅音を呼び止めた。

「レナ、後で魅ぃちゃん家遊びに行くから」
ゆっくりと振り返って魅音を凝視するレナ。
「・・・勝手に着替えちゃ嫌なんだよ・・・だよ?」
「ひっ!?」

レナの目の色が変わっていた。